利回り付きステーブルコインがDeFiで存在感拡大、何が変わっているのか

DeFi市場では、単に価格変動を避けるだけのステーブルコインではなく、保有している間に利回りを生む「yield-bearing stablecoin」が注目を集めています。CoinMarketCapの週次DeFiまとめでも、Ethena LabsのUSDeやMarginFiのYBXのようなプロダクトが取り上げられており、利回りを組み込んだ設計が2024年の主要テーマの一つとして扱われています。

注目される理由は「休眠資金」の活用

従来のステーブルコインは、価格の安定性を優先する一方で、保有者に直接的な収益をもたらす設計ではありませんでした。これに対し、利回り付きステーブルコインは、ユーザーが資金を動かさない間も一定の収益機会を得られる点が特徴です。CoinMarketCapの解説では、USDeはステーキング由来の収益や先物・無期限契約市場の資金調達率などを組み合わせることで、オンチェーン上の「ドル建て貯蓄手段」に近い性質を持たせています。

この発想が注目される背景には、暗号資産市場で「保有しているだけの資金」をどう使うかという課題があります。市場が強気・弱気どちらに傾いていても、トレーダーやDeFi利用者は一定量のステーブルコインを待機資金として保有します。その待機資金が利回りを生むなら、資本効率を高められるという見方が広がっています。

USDeやYBXが示す、新しい競争軸

Ethena LabsのUSDeは、発行から間もない時期にTVLが急拡大したことが注目されました。CoinMarketCapの記事では、ローンチ後しばらくして7億8,000万ドル超がロックされたとされ、DeFi内での存在感が急速に高まったことがうかがえます。さらにUSDeは、DeFi内で自由に組み合わせやすい“composable”な資産として設計されている点も特徴です。

一方、MarginFiが示したYBXは、Solana系の文脈で利回りを組み込んだステーブルコインとして紹介されています。こちらは、ステーキング収益、MEV、レンディング収益といった複数の収益源を取り込む構想が示されており、単一の担保モデルではなく、複数のDeFi要素を束ねた設計が競争軸になりつつあることを示しています。

市場全体では「利回り」を求める動きが広がる

CoinMarketCapの別の週次レポートでは、暗号資産のうち利回りを生む資産の比率が伝統金融よりも低い一方で、そのギャップが縮まりつつあると整理されています。レポートは、利回り付きステーブルコイン、ETHやSOLのリキッドステーキング、そして新たなBitcoin系の利回りプロダクトまで含めて、オンチェーン上で収益を得る手段が増えていると指摘しています。

また、CoinMarketCapのRWA関連まとめでは、トークン化された米国債や短期証券に裏付けられたステーブルコイン型資産も人気を集めているとされています。これは、DeFiの利回り競争が「暗号資産ネイティブの設計」だけでなく、現実資産を持ち込むRWAとも接続し始めていることを示しています。

ただし、利回りには仕組み上のリスクもある

利回り付きステーブルコインは魅力的に見えますが、仕組みが複雑になるほど、注意点も増えます。USDeの説明では、デルタヘッジ戦略を使う一方で、取引所のカウンターパーティリスクや外部プラットフォーム依存といった論点があるとされています。つまり、価格が安定して見えても、裏側では複数の市場条件とシステム依存が絡みます。

加えて、利回りを生む設計は、市場環境によって収益源が変動しやすいという側面もあります。たとえば、先物市場の資金調達率やステーキング収益は一定ではなく、局面によって受け取れる利回りの水準が変わります。したがって、単純に「安定資産なのに増える」と見るのではなく、どの収益源に依存しているのかを確認する必要があります。

DeFiの次の焦点は「利回りの見える化」

今回の流れで重要なのは、DeFiが再び「利回り」の設計競争に入っている点です。かつてはレンディングやAMMの報酬が中心でしたが、今はステーブルコインそのものに利回りを組み込むことで、ユーザーの資金滞留を減らし、資本効率を上げようとする動きが見られます。

今後の注目点は、こうしたプロダクトがどれだけ長期的に利用されるか、そして利回りの原資とリスクがどの程度透明に説明されるかです。DeFiでは見た目の年率だけでなく、収益源・担保構造・相手先リスクの3点をセットで確認することが、以前以上に重要になっています。

まとめ

利回り付きステーブルコインは、DeFiの「待機資金」を収益資産へ変える試みとして存在感を増しています。もっとも、その裏側には複雑な収益設計とカウンターパーティリスクがあるため、仕組みの理解が欠かせません。