SECが暗号資産ETFの判断を先送り、制度設計の“次の一手”は何か
米証券取引委員会(SEC)は、暗号資産ETFをめぐるステーキングと現物償還(in-kind redemptions)の判断を後ろ倒しにしました。The Blockによると、SECは長期的で包括的なデジタル資産規制の設計を見据え、追加の検討時間を確保しているとされます。
一方で、この動きは単なる「停止」ではありません。SECは2025年7月に、暗号資産ETPについて authorized participants による in-kind の設定・償還を認める आदेशを承認しており、スポット型ビットコインETFやイーサリアムETFも対象に含まれました。つまり、当局は運用実務を改善しながらも、ステーキングのような新しい収益設計については慎重に見極めている構図です。
何が先送りされたのか
今回の論点は大きく2つです。1つ目は、イーサリアムETFなどにステーキング機能を組み込めるかどうか。2つ目は、ETFの設定・償還を現金ではなく原資産で行う現物償還を、どの範囲で認めるかです。The Blockは、GrayscaleのイーサリアムETF関連のステーキング判断と、複数の暗号資産ETFに関する現物償還判断が延期されたと報じました。
これらは一見すると運用上の細かな差に見えますが、投資家保護、商品の効率性、税務・カストディ・価格形成の実務に直結します。特にステーキングは、暗号資産ETFを「保有するだけの商品」から、ネットワーク参加に伴う収益要素を含む商品へ近づけるため、SECとしても法的位置づけの整理が必要になります。SECのCrypto Task Forceは、暗号資産の規制線引きを見直し、登録の道筋や開示枠組みを整える役割を掲げています。
2025年の前進と、2026年の迷い
2025年7月のSEC承認は、暗号資産ETPの運用面では重要な前進でした。現物償還が認められると、ETFの設定・解約の効率性が高まり、従来の「現金のみ」よりも伝統的な商品設計に近づきます。SECの公表文でも、今回の承認は、最近承認された現物ビットコインETF・イーサリアムETFが現金ベースに限られていた点からの転換として説明されています。
ただし、現物償還の承認が進んだからといって、ステーキングまで同じ速度で通るとは限りません。ステーキングは、ネットワークの合意形成に参加する行為であり、単純な保管や交換とは異なります。SECが慎重なのは、利回りの源泉、リスク開示、カストディ上の責任分界、さらには証券法上の評価まで、確認すべき項目が多いためと考えられます。これは推測ではありますが、Crypto Task Forceが「clear regulatory lines」を掲げている点からも、論点整理を優先していることは読み取れます。
市場にとっての意味
今回の延期は、暗号資産ETF市場にとってネガティブ一色とは言い切れません。むしろ、制度化が進むほど、当局は「どこまでを既存の証券インフラに載せるか」を細かく区切る必要が出てきます。現物償還が先に整備され、ステーキングは別枠で審査される流れは、商品ごとの差異を明確にした上での段階的な制度設計と見ることができます。
また、2026年に入ってからのSEC関連文書では、暗号資産規制の文脈が「取締り中心」から「枠組みづくり」へ移りつつあることが確認できます。SEC公式サイトのCrypto Task Forceページでも、登録ルートの整備、証券・非証券の線引き、実務に即した開示設計が重点項目として掲げられています。したがって今回の先送りは、後退というより、制度の精緻化に時間を使っている局面と捉えるのが妥当です。
読み解くポイント
今後注目したいのは、以下の3点です。
1. ステーキングの位置づけ
ETFに組み込まれるステーキングが、どの水準の開示・管理体制を条件に認められるのか。ここはイーサリアム関連商品の設計に影響します。
2. 現物償還の適用範囲
すでに承認された in-kind の仕組みが、どのETF・どの市場参加者にまで広がるのか。運用効率の改善という観点では、制度面の実装が焦点になります。
3. SECの長期方針
Crypto Task Forceの議論が、個別案件の判断にどう反映されるか。今後の会合やガイダンス次第で、商品設計の前提条件が変わる可能性があります。
まとめ
SECの今回の対応は、暗号資産ETFの制度化が止まったことを意味するわけではありません。むしろ、現物償還のような実務改善を進めつつ、ステーキングのような新要素は慎重に切り分けている段階です。暗号資産市場の「商品化」は着実に進む一方で、その中身はまだ調整途中にあります。今後は、SECがどこまで明確なルールを提示できるかが焦点になりそうです。
